親知らず
親知らずとは
親知らずとは、永久歯が生え揃った後に前歯から数えて8番目に生えてくる歯のことです。
真っ直ぐに生え、かつ周囲の歯や歯ぐきを傷つけたり圧迫することがなければ、本来は他の歯と変わらず、抜歯せずとも問題ありません。
しかし、現代人の顎は親知らずが生えるスペースが足りないことが多いです。その結果、傾いて生えたり、顔を出さずに埋まったまま周囲の組織を圧迫することがあります。
親知らずが傾いて生えると、以下のような悪影響があります。
- 本来あるべきスペースに収まらないため周囲の歯や組織を傷つけて炎症を招く
- ブラッシングが困難になるためプラークを落とせず、虫歯や歯周病のリスクとなる
- 隣の歯を圧迫している場合は、ドミノ式に歯並びを乱す可能性がある
- 噛み合わせを乱す可能性がある。
- 歯肉炎が起こりやすい妊娠時に傾いた親知らずを放置すると、炎症の悪化を招く
これらのリスクは、事前に親知らずを抜歯することで回避できます。 さまざまなトラブルの原因になる前に、親知らずの抜歯を検討しましょう。
次のような症状は早期の受診を
それでは、具体的にどのような症状を抱えている方が親知らずを抜歯するべきなのでしょうか。以下の症状がある方は、早期の受診を推奨します。
- 親知らずが埋まっている状態で痛みがある方
- 痛みはないが親知らずが斜めに生えている方
- 親知らずの周辺が時々痛む方
- 親知らずの手前の歯が虫歯になっている方
- 親知らずの周辺の歯肉が腫れている方
- 親知らずの影響で噛み合わせが悪くなっている方
- 歯科矯正を考えている方
特に親知らずの早期受診をおすすめしたいのは、斜めに生えていて周囲を傷つけるリスクがある方や、手前の歯が虫歯になってしまっている方などです。
前述の通り、親知らずはブラッシングでプラークを除去するのが難しいため、虫歯や歯周病を引き起こすリスクが高い歯となります。
親知らずが原因で周囲の歯が虫歯になる可能性もあるため、周辺が痛む方や、歯肉が腫れていると感じる方は、早めの受診を推奨します。
また、 親知らずが斜めに生えていると矯正した歯が台無しになるリスクもあるため、歯科矯正を考えている方も、早めに受診するようにしましょう。親知らずは、成人前後の年齢で治療するのが最も体への負担が少ないとされています。
しかし、親知らずを抜歯するタイミングは人によりさまざまです。抜歯の必要性の有無や時期に関しては、歯科医師と相談しながら決めるのが重要です。
早めに親知らずを抜歯するメリット
早期に親知らずを抜歯すると、以下のようなさまざまメリットがあります。メリットを把握したうえで、早期受診すべきかを検討してください。
- 親知らず周辺の歯が虫歯にならなくて済む
- 痛みから解放される
- 噛み合わせや歯並びの悪化を防ぐことができる
- 歯ブラシがしやすくなる
親知らずの抜歯に伴うリスクについて
前述の通り親知らずの抜歯にはさまざまなメリットがありますが、合わせてリスクがあることも把握しておく必要があります。
以下では、主な2つのリスクを解説します。
下唇や顎の知覚を担う神経の麻痺
下顎には、下顎管(かがくかん)という1本の管があります。
この管の中には、下歯槽神経(かしそうしんけい)と呼ばれる、下唇や顎の先端部分であるオトガイの知覚を司る大切な神経が通っています。
下顎の親知らずは下歯槽神経に近接していることが多いため、抜歯の際に傷つけてしまうリスクがあります。
下歯槽神経が損傷すると、歯茎の一部や下唇、オトガイの神経が麻痺することがあるため注意が必要です。
副鼻腔炎(歯性上顎洞炎)
呼吸の際に空気が流れる道を鼻腔(びくう)といいます。鼻腔の周囲には4つの空洞があり、これらをまとめて副鼻腔(ふくびくう)と呼びます。
上顎の親知らずのすぐ上には、上顎洞(じょうがくどう)という副鼻腔があります。
歯の根っこが上顎洞に突き出ていたり、根尖と上顎洞を隔てる骨が薄い場合、抜歯処置を施す際に副鼻腔と口がつながり細菌や真菌などが感染し、副鼻腔炎の一種である上顎洞炎を引き起こすリスクがあります。
しかし、万が一症状が出た場合でも、適切な処置を行うことで空洞は塞がります。
妊娠のご予定がある方の抜歯
妊娠時は体内のホルモンバランスが崩れ、 口腔内での炎症が起こりやすくなります。
妊娠を主な原因として歯肉炎になることを妊娠性歯肉炎と呼び、妊娠以前より歯周病になるリスクが高くなるとされています。
親知らずは、ブラッシングでプラーク除去できない、周囲の歯や歯肉を傷つけたり圧迫するなどで炎症を引き起こすことなどが原因で、歯周病になりやすいです。
つまり、口腔内に悪影響を与える可能性のある親知らずが生えた状態で妊娠を迎えた場合、極めて歯周病の危険性が高くなるということです。
通常、親知らずの抜歯では麻酔(通常は局部麻酔)が必要です。
通常量の局所麻酔であれば胎児への影響はほとんどないといわれていますが、親御さんにとっては「影響はほとんどない」という言葉はあまり安心できるものではありません。
実際に、麻酔による影響を詳しく説明しても、「やっぱりやめておきます」とおっしゃる親御さんがほとんどです。